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<2004/01/30> ■「妖怪小説 百鬼夜行ー陰」(京極夏彦・講談社ノベルス) 「妖怪」をモチーフにした短編小説集。すべて京極堂シリーズの登場人 物とその関係者などが主人公になっており、シリーズ内では語られなかっ た心のうちや知られざる事件などを描いています。 これを読んでいると、「この人は本編ではどういう風な役回りだったか な?」とか「あそこでこの人はこういうことを考えていたのか」などと新 しい発見が相次ぎ、もう一度確認のために京極堂シリーズを読み返したく なってしまいます(^^;。 時間がくさるほどあるならじっくり読み返したいところですが、他に読 みたい本が山積している現状ではなかなか難しいところですねえ〜〜〜。 ■「探偵小説 百器徒然袋ー雨」(京極夏彦・講談社ノベルス) 京極堂シリーズで大人気(だと思われる)はちゃめちゃ探偵榎木津礼二 郎が大活躍、難事件?を鮮やかに解決する中編3作。実は私は、この榎木 津というキャラクターがどうもイメージしにくく、また理解に苦しむ行動 ばかり取るため、京極堂シリーズではあまり好きな登場人物ではなかった のです。 が。この作品を読んでからというもの、彼に対する評価は一変、こんな おもしろい人物だったのか!と目から鱗が30枚ぐらい落ちたような気が しました(大げさ)。 京極堂と榎木津とのコンビはまさに恐いものなし。もし実在するのなら、 ぜひ間近で活躍ぶりを「ながめて」みたいものです(笑)。 ■「冒険小説 【多々良先生行状記】今昔続百鬼ー雲」(京極夏彦・講談 社ノベルス) 自称妖怪研究家の多々良センセイと、語り手の「ぬ。」こと沼上蓮次と が繰り広げる、妖怪伝説収集珍道中の中編4作。 訳のわからない人物(多々良センセイ)と比較的常識的な人物(沼上) とを組み合わせ、両名がぼけつっこみをしながら話が進んでいくので、な にやら漫才とかコントを見ているような気になります(笑)。 それにしても、ただただ妖怪のことを考えているだけなのに、いつの間 にか事件の核心に迫ってしまい、その上解決までしてしまう(もちろん本 人には自覚がまるでなし)多々良センセイっていったい何者なんでしょう (^^;。 ちなみに最後に収録されている「古庫裏婆」ですけど、私は昔実際に即 身成仏を見たことがあるので、かなりリアルに話を楽しむことができまし た。百聞は一見にしかず、ですねぇ。 ■「嗤う伊右衛門」(京極夏彦・角川文庫) 「怪談」と銘打っている作品のようですが(文庫裏表紙解説から)、私 にはとうてい怪談めいた話には思われず、むしろ岩と伊右衛門との美しい 純愛物語として受け取りました。 岩と伊右衛門をはじめとする登場人物の描写が詳細で、彼らの生き様が ありありと脳裏に浮かんでくる傑作だと思います。 物語の結末としては結局やりきれない状況になってしまうのですが、そ れでも「嗤っていた」伊右衛門は、最後は幸せだったのでしょうか。なん だか切なくて悲しくて、とても心に残る物語でした。 <2004/01/26> ■「すべてがFになる」(森博嗣・講談社ノベルス)〜「すべてがFにな る」(森博嗣原作・浅田寅ヲ作画・幻冬舎バーズコミックススペシャル) 第一回メフィスト賞を受賞した、森博嗣のデビュー作にしてS&Mシリー ズ1作目。本来は2作目の「冷たい密室と博士たち」が処女作らしいのだ が、出版社の意向でこちらが1作目になったそう。 孤島の研究所に閉じこめられている天才科学者、コンピュータシステム とバーチャルリアリティ、そしてそこで起きる殺人事件と、とにかくこの 作品はいろんな意味でインパクトがあります。なので、出版社がこちらを 1作目に、と主張したのはなんとなくわかる気がしますね。 で、この作品のマンガがあるというので、あちこちさがしてブックオフ で入手、さっそく読んでみました。 まずキャラクターですが、萌絵はほぼイメージ通りでした。でも犀川先 生については、「森さんは『かっこ悪く』奥様と担当氏は『かっこよく』 とのオーダー」(浅田氏・269ページ)があったそうで、そのせいかわ かりませんが、”かっこよく描きたいけどでもそうもいかない(^^;”とい う浅田氏の苦悩(笑)が見えるようなビジュアルに仕上がってました。 他の登場人物では、四季博士と世津子、国枝桃子の女性陣が私の好みに ピッタリでした。 ストーリーは原作に忠実で、違和感はほとんど感じられなかったです。 画面構成なども、冷たく無機質な感じがよく出ていたと思います。 また、犀川の内面が「分裂」して悩むシーンは圧巻でした。 ■「マークスの山 上下」(高村薫・講談社文庫)〜「照柿」(高村薫・ 講談社)〜「レディ・ジョーカー 上下」(高村薫・毎日新聞社) 警視庁刑事の合田雄一郎が登場するシリーズ物3作です。ほんとうは、 3冊まとめて読了報告できるような内容の作品では全然ないのですが、あ まりにそれぞれの物語が「濃い(笑)」ため、1冊ずつ報告するのはあき らめました(^^;。 3作とも中心になる大きな事件が起きるのですが、その解決や犯人逮捕 の経緯を追うだけでなく、犯人が犯罪を犯すきっかけやその渦中の心理状 態も克明に描かれ、物語にぐいぐいと引き込まれます。ほんのちょっとし たタイミングのずれや歯車の狂いで犯罪に走る登場人物を見て、背筋が寒 くなる思いがしました。 また、事件の背景にある構造的な悪なども鮮やかに描き出され、このあ たりも読み応えのある作品に仕上がっている要素の1つかと思います。 <2004/01/19> ■「火車」(宮部みゆき・双葉社) いわゆる「サラ金地獄」などを題材にしたミステリー。突如消えてしまっ た、主人公の甥の婚約者はいったい「誰」なのか。休職中の刑事が地道な 情報収集を手がかりに真相に迫っていくさまが克明に描かれ、目が離せな い1冊。 筋を追うのも楽しい作業でしたが、主人公をとりまく登場人物が愛すべ きキャラクターとして表現されているのもよかったです。そのせいか、暗 いテーマを扱っているにもかかわらず、読後感がわりとさわやかでした。 ■「巷説百物語」(京極夏彦・角川文庫) 言わずとしれた直木賞受賞作品に続いていく最初の1冊。だいぶ前に買っ ていたのですが、京極堂シリーズが一段落した時点で森博嗣を読み始めて しまったため、こちらはしばらく積んだままの状態でした(^^;。 で、京極氏の受賞をきっかけとして読んでみたら、これが非常におもし ろい。妖怪版必殺仕事人(笑)みたいな感じで、犯人が鮮やかに暴き出さ れるさまが痛快です。 でもそれだけでなく、人間の業の悲しさやむなしさもしっかり表現され ているところが、京極氏のすごいところですね。さっそく「続」と「後」 も買ってこなくちゃです(^o^)。 ■「ブレイン・ヴァレー 上下」(瀬名秀明・角川文庫) 題名でわかるとおり、人間の「脳」を題材にしたホラーサスペンス。 「パラサイト・イヴ」と同じく専門用語が次々と出てきますが、登場人物 の小学生に質問させ、彼に主人公などがわかりやすく説明するという手法 で、知識がない私にもわりと理解できる内容になっていると思います。 それにしても、「我々の脳の中には天国と地獄がある」(下巻352ペー ジ)という一節を読んだときは、なんだか背筋がぞわっとするような感じ がしました。自分のからだの一部なのに、人間の脳ってはかりしれないも のなのだ、というのが読後の素直な感想です。 <2004/01/17> ■「黒猫の三角」(森博嗣・講談社ノベルス)〜「黒猫の三角」(森博嗣 原作・皇なつき漫画・角川書店あすかコミックスDX) Vシリーズの1作目。瀬在丸だの小鳥遊(たかなし)だの保呂草だの、 こんな名字いったいどこからさがしてきたんじゃ〜!と思わずツッコミを 入れたくなるような名前の登場人物がわらわらと出てくる作品(笑)。 これは決して故なきことではなかっのだな、と最近ようやくわかってすっ きりしてますが(謎)、読み始めた頃はその名前が気になって気になって、 なかなか物語に没入できずに悩んだものでした(^^;。 で、皇なつき氏のマンガなのですが。これがまた見事に私の頭の中の映 像にクリーンヒット!してしまいました(^o^)。 「黒猫…」の前に小鳥遊君が主人公の短編が1本入っているのですが、 ちょっと読んだだけで「これこれ!これこそれんちゃんだわ!!」と心の 中で拍手してしまったほどです(笑)。 もちろん他のキャラクターもバッチリで、特に私には映像化が難しかっ た紅子などは「おお、こういう顔していたのか〜」と思わず納得してしま うほど。絵も美しく描き込みも詳細で、何より原作から抜粋したエピソー ドのつなげ方のうまさには、うーんとうなってしまいました。久々に読み 応えのあるマンガだったなあ、と思った次第です。 ■「パラサイト・イヴ」(瀬名秀明・角川ホラー文庫)〜「パラサイト・ イヴ」(瀬名秀明原作・しかくの漫画・角川書店あすかコミックスDX) 「ミトコンドリア」を題材にし、生物学の専門用語がバリバリ登場する ホラー。めっちゃ有名なのでいまさら紹介するまでもないと思いますが、 「イヴ」がどんどん増殖して変容していくさまは、読んでいてかなり怖かっ たです。 マンガの方はその変容ぶりが絵で具体的に表現されているため、ちゃん と見られるかな〜とちょっと不安に思っていたのですが、あまり汚いとか 気持ち悪いという印象はなく、確かに不気味ではあるもののある種の「魅 力」みたいなものが出ていてなかなかよかったと思います。 巻末の解説で瀬名氏も書いておりますが、しかくの氏の描く人物はとて も「肉感的」で、非常に存在感があるんですね。この物語によく合った絵 柄だと思いました。 が、ところどころに出てくるオタク的なギャグ?に少々ついていけない ところがあって、それがちょっぴり残念でした。 <2004/01/14> ■「屍鬼 一〜五」(小野不由美・新潮文庫) 昔からの風習を守り人々の結びつきが密接なある村で、一夏にたくさん の死人が出、不審な転出が続く。いったい何が起こっているのか、そして その災厄は止めることができるのか? 小野氏の作品ということで、ブックオフで見つけては買って積んでおい た作品です。先日5冊そろったので、読んでみました。 題名からしてホラーの様相を呈してますけど、確かにそういう要素も強 いですが、それよりも人間の心の闇、矛盾、そのあたりの描写がやはり読 み応えのある作品でした。小野氏の本領発揮ですね。 あとがきで宮部みゆきさんが書いておられますが、この作品は「呪われ た町」(スティーブン・キング)へのオマージュとして書かれたものだそ うで、私はこちらは読んだことはないのですけど、宮部氏の言葉によると 「正邪の区別に迷いは」なく、「光と闇はきっちりと境界線を隔てて対立」 (5巻476ページ)している物語なのだそうです。 が、この「屍鬼」は違います。一見「対立するもの」として描かれてい る人間と屍鬼ですが、そのどちらが正しくてどちらが間違っているか、と いうことは彼女は決めていない。どちらも「人間的」で、迷いもあれば間 違いもある。むしろ「正義」の名のもとに屍鬼を「狩る」ことは果たして 正しいのか?という疑問を投げかけているのではないのか、と私は感じま した。非常に奥が深い作品だと思います。 読後感としては、「怖かった」という感情はほとんどなく、「やるせな さ」「悲しさ」が際だっていましたね。 「十二国記」シリーズで小野氏の文章を気に入られた方には、ぜひこち らもおすすめいたします(*^_^*)。 ■「理由」(宮部みゆき・朝日文庫) 「屍鬼」のあとがきが宮部氏だったので、同じく積んであった「理由」 を次に手に取ってみました。 私は宮部氏を読むのはこれが初めてなのですけど、複雑な人間関係を関 係者のインタビューという形式で進めて解いていく、という手法はなかな か新鮮でおもしろかったです。 宮部氏はとにかく作品が豊富なので、次はどれを読もうかと今迷ってい る最中です。なにかおすすめなどありましたら、教えてくださいませ。 ■「四季 秋」(森博嗣・講談社ノベルス) 「四季」シリーズ3作目。今回は犀川と萌絵が再登場、あいかわらずの ノリで活躍しています。しかも保呂草と各務までからんできたりして、思 わずいろんな想像をたくましくして楽しんでしまいました(笑)。 実はこの作品には、シリーズの要である真賀田四季(の実体)はほとん ど出てきません。それでもやっぱり「四季」シリーズなのだな、と納得さ せてしまう作りはさすが森氏ですね。 3月に最終話「四季 冬」が出るのですけど、その前に4部作をまとめ たハードカバーが2月に出版され、しかも何かおまけがつくと聞いて、心 が揺れている私です(笑)。講談社はあいかわらず商売がうまいっすね。 <2004/01/04> ■「グイン・サーガ外伝18 アルド・ナリス王子の事件簿 消えた女官 ーマルガ離宮殺人事件ー」(栗本薫・ハヤカワ文庫) グインサーガ外伝の最新刊です。本 編の方はミステリー色はあまりなく、やはりファンタジーというのがふさ わしい筋立てですが、これはもろ謎解きが中心になった作品です。 あとがきで作者の栗本氏が言っておりますが、「実はすごく以前から 『グイン・サーガ』の世界を舞台にしたミステリ、というのを書いてみた かった」(328ページ)そうで、オーソドックスで少々地味ながら勢い があり、作者が「ノッて」書いたのがよく伝わってきました。 グイン・サーガの世界を知らない人には少々ついていくのが大変かもし れませんけど、軽く読んでみるにはいいかも。 また「グイン・サーガ・ハンドブック2」(ハヤカワ文庫)にも、30 ページほどの超短編ですが「ナリスの事件簿 クリスタル・パレス殺人事 件」という作品がありますので、ご参考までに。 ■「気さくなお人形、19歳(短編集 地球儀のスライス)」〜「六人の 超音波科学者」〜「朽ちる散る落ちる」(森博嗣・講談社文庫&ノベルス) 山の中に忽然と建っている奇妙な「土井超音波研究所」を舞台とした、 個人だけでなく「組織」などの関係も見え隠れする、壮大な?背景のミス テリィ。 「気さく…」では研究所の具体的な話は出てこないものの、あとの2作 にとって意味を持つ人間関係などが書かれているので、先に読んでおく方 がいいかと思います。 しかし、森氏が工学部の助教授だからなのでしょうが、あいかわらず私 などには絶対考えつかないような構造の建物が出てきたりして、そういう ところも大変興味深い作品です。 ■「赤緑黒白」〜「四季 春」〜「四季 夏」(森博嗣・講談社ノベルス) …こういう風に書くとネタばれになるのかしら、とか思いつつ書いちゃっ ている私(おいおい)。 一見「赤緑…」と「四季」には何の関連もないように思えるのですけど、 それが実は…というどんでん返し?がツボでした(^o^)。もうこれ自体が ミステリィなんですよね。非常におもしろかったです。 「四季」シリーズは天才「真賀田四季」が主人公の作品で、その常人に は理解しがたい発想が丁寧に描かれています。これを読んでいて思い出し たのが「アルジャーノンに花束を」(ダニエル・キイス ハヤカワ書房ダ ニエル・キイス文庫)で、どちらも私の知らない世界を見事に表現してい る作品なので、読んでいてエキサイティングでしたね。 早く「四季 秋」「四季 冬」が出ないかなあ、と今から心待ちにして います。「秋」は今月ぐらいに発売でしたっけ?楽しみ〜♪ <2004/01/02> ■「魔剣天翔」〜「恋恋蓮歩の演習」〜「捩れ屋敷の利鈍」(森博嗣・講 談社) 実際は「恋恋…」と「捩れ…」の間に「六人の超音波科学者」が入るの ですが、上記3作は同じモチーフを使った作品だと思われますので、まと めて書かせていただきました。 この3作に共通しているキーワードは「関根朔太」という画家で、彼の 家族や作品、ゆかりの品などをめぐって殺人や盗難などが起こります。 「魔剣…」以前の作品ではほのめかされていただけの、Vシリーズの中 心人物の1人で物語の筆記者でもある「保呂草」の本領発揮ともいえる活 躍ぶりが、なんとも痛快で最高でした。 また、美術品の描写も非常に詳細で、特に「恋恋…」で出てくる「関根 朔太の自画像」は、ぜひぜひ実物を見たい!!と切実に思ってしまった私 です。 また「捩れ…」では、保呂草とS&Mシリーズの萌絵との出会いも描か れていて、いろいろ想像力をかき立てられるシチュエーションでなかなか 興味深かったです(^o^)。 ところで、「魔剣天翔」というタイトルは「魔界転生」を真似たそうで (「100人の森博嗣」25ページ・メディアファクトリー)、こういう 言葉遊び的なノリって大好きなんです。 この作品と対応している「封印再度 WHO INSIDE」(「100人の森博 嗣」20ページ)などは、すっかりその「洒落」が気に入ってしまいまし た(笑)。 作者の思うつぼってやつですね(^^;(^^;(^^;。 |