読了報告 2004年2月

ミステリー'z MLに投稿したMIKAのメールから、読了報告のみ抜粋して掲載しています。

<2004/02/25>
■「魔法飛行」(加納朋子・創元推理文庫)

 前作「ななつのこ」の続編にあたるこの作品は、主人公の大学生駒子が 身近に起こるちょっと不思議な事件を書きつづり、その合間に謎の手紙が 挿入される、というこれまた興味深い形式になっています。
 あまり関連がないと思われるそれぞれの事件が謎の手紙を通じてだんだ んと1つの流れにまとまっていき、人1人の命にかかわっていくさまが実 に見事に描かれており、思わずぐいぐいと物語の世界に引き込まれていき ました。
 事件の中で一番印象に残ったのは、やはり表題作の「魔法飛行」でしょ うか。赤い風船や恐竜、UFO、超能力などのちょっとだけ非現実的な要素 がきれいにちりばめられており、そこにからむ幼なじみ同士の恋物語がま たいい味を出していると思います(^o^)。


■「魔術はささやく」(宮部みゆき・新潮文庫)

 タクシーの交通事故、列車への飛び込み自殺、ビルからの飛び降り…。 それらは悲しいことではあるけれど、実によく起きるありふれた事件であ る。が、それらがなんらかのつながりを持っていたとしたら?その裏にあ るのはいったい「誰」の意志なのか?
 恋人商法や催眠、横領、いじめなどのさまざまな要素をふんだんに盛り 込んだ、宮部氏の傑作。読み終わったときの印象としては、まさに題名に あるとおり、彼女の「魔術」にかかったような気分でした。
 主人公の高校生「日下守」のキャラクターもいいし、彼をとりまくさま ざまな人々の生き様も丁寧に描かれており、筋を追うだけでなく彼自身の 生活ぶりを一緒に体験できるようなリアルな感覚が素晴らしいと思います。


■「リング」〜「らせん」〜「ループ」(鈴木光司・角川ホラー文庫)

 小説を読まない人でも題名ぐらいは知っているであろう、鈴木氏の超ヒッ ト作品。私も今まで読む機会がなかったのですが、「リング」を古書店で 50円で手に入れたのがきっかけで(爆)手に取ってみました。
 こんなおもしろい物語を今まで知らないでいたのはほんとうに残念だっ たなあ、というのが正直な気分です。言われているほど「怖い」という感 じはありませんでしたが、それでも「リング」のラストは背筋が冷たくな るような恐怖を感じました。
 その結末を「らせん」で見事にひっくり返し、さらに「ループ」で思い もよらない方向へ持って行く手腕は、多少強引ながらエンターテイメント としては秀逸のものだと思います。
 作者によると、この3部作は最初から構想があって書かれたものではな いそうで(「ループ」あとがき・420ページ)、だからこそどんでん返 しのおもしろさが際だっているのかもしれませんね。


◇◇◇


<2004/02/20>
■「墜ちていく僕たち」(森博嗣・集英社)

 「インスタント・ラーメン」がキーワード?の、一風変わった短編集。
 内容を書いてしまうとおそろしくネタばれになるのでこのぐらいにして おきますが、軽妙な文体とそれぞれ微妙にリンクした5つの作品の関係が、 それ自体ミステリと言えるかもしれません。
 あと、それぞれの作品の題名がまたツボで、特に最後の「そこはかとな く怪しい人たち」なんて、ここを見ただけで笑えました(笑)。


■「ななつのこ」(加納朋子・創元推理文庫)

 こちらのMLでもよく話題になっている、加納朋子のデビュー作。  少し前に新聞でエッセイを連載していたのを目にしていたのですが、そ の温かくさわやかな文体が気に入って読んでみました。
 内容については、主人公が気に入って買った本の著者に自分の近況など も交えてファンレターを書き、それに謎解きのついた返事が来る、という ユニークな手法で物語が進んでいきます。作中小説に出てくる登場人物も 素敵だし、何よりそのなつかしさがいっぱいになるような雰囲気がいいで すね。
 でも、ただほわんとしているだけでなく、謎の回答がけっこうシビアで ちょっとだけぞくっとさせられたりしました。
 最後の最後に明かされる謎にもやられてしまいましたし、こういうミス テリもいいですね〜。続いて「魔法飛行」も読んでみようと思います。


■「我らが隣人の犯罪」(宮部みゆき・文春文庫)

 以前宮部みゆきの作品についてこちらのMLでお聞きしたとき、複数の 方におすすめいただいた短編集。
 期待に違わず素晴らしい作品ばかりで、うーんとうなりながらあっとい う間に読んでしまいました。一番印象的だったのは「この子誰の子」かな。 扱っているテーマも興味深かったし、何より主人公の少年のまっすぐさに しびれてしまいました。こういう子とお友達になりたいものです(笑)。


■「過ぎる十七の春」(小野不由美・講談社X文庫ホワイトハート)

 春休み、17歳になる従兄弟2人がほぼ同時にこの世ならざるものから の災厄に見舞われる。いったい何が起きたのか、そして彼らはそこから逃 れることができるのか?
 小野氏の代表作「屍鬼」にも通じる、本格的なホラー。どうしてこれが ティーン向けの文庫にだけ収められているのか、ちょっと納得がいかない と思うほど完成度の高い作品。十二国記と同じように講談社文庫からも出 して、幅広い年代の方に読んでもらえばいいのに、と切実に思いました。  あいかわらずの筆力で、花の咲き乱れる庭や古い家屋、2人の少年をは じめとする人物などが、生き生きと描写されています。
 ストーリーにミステリ色はあまりないものの、彼らの家系や母親の自殺 などの謎もちりばめられていて、飽きさせない作品だと思います。


■「緑の我が家」(小野不由美・講談社X文庫ホワイトハート)

 父親の再婚をきっかけに1人暮らしを始めた主人公は、新居となったハ イツ・グリーンホームで、次々と不可解な事件や不思議な人物に遭遇する。 その謎は、遠く子供時代の記憶につながっていた…。
 こちらもホラー作品です。「過ぎる…」に比べるとややこぢんまりした 印象がありますが、それでも次に何が起きるのか、とドキドキしながら読 み進めました。
 最後に明かされる子供の頃に遭遇した事件の真相は、ぞっとすると同時 に切なく、主人公たちと一緒に複雑な思いを持った私です。


◇◇◇


<2004/02/12>
■「冷たい密室と博士たち」(森博嗣・講談社文庫)〜「冷たい密室と博 士たち」(原作:森博嗣・作画:浅田寅ヲ・幻冬舎バーズコミックススペ シャル)

 S&Mシリーズ2作目。極地研の低温度実験室で行われた密室殺人の謎 を、犀川と(主に)萌絵が追う。
 森氏の処女作になるこの作品は、舞台こそ特殊なものの、密室のトリッ クや殺害の動機などは、基本的にオーソドックスなミステリになってます。 途中、萌絵が研究所で犯人におそわれ、ネットで犀川に助けを呼ぶシーン は緊迫感にあふれて読み応えありでした。
 マンガの方は、以前教えていただいた書店に買いに行ったところ、残念 ながら一足違いで売れてしまったらしくそのときは手に入らず(人気があ るのかな?)、さきほどやっと再販されたものを買うことができました。  ストーリーは原作に忠実なものの、あいかわらず浅田氏独特の世界が展 開しており、キャラクターも犀川の不自然さ(笑)をのぞいて、非常によ く表現されていたと思います。特に喜多助教授への思い入れは並々ならぬ ものがあるようで、かな〜りかっこよく描かれてましたね。
 それにしても、要所要所に出てきてしかもオチまで持って行ってしまう 国枝桃子助手には笑ってしまいました。こういうギャグは大好きです♪


■「緋色の囁き」  「暗闇の囁き」  「黄昏の囁き」 (綾辻行人・講談社文庫)

 館シリーズと並行して書かれた囁きシリーズ3作。どの作品も、主人公 の日常生活の中でときどき浮かんでくる子供の頃のさまざまな「記憶」が キーとなり、殺人事件の謎にせまっていきます。
 かっこ書きで挿入される「囁き=キーワード」が、ぞくぞくするような 雰囲気を盛り上げて物語の世界にひきこんでくれます。
 過去の記憶を完全に取り戻したとき、事件の真相が見えてくる。その切 なさややりきれなさが、非常に印象的でした。


■霧越邸殺人事件(綾辻行人・新潮文庫)

 小さな劇団一行が、旅行途中雪に降り込められたどりついた山中の霧越 邸という大きな屋敷。そこで次々に起こる、童謡に見立てた連続殺人事件。 果たしてその真相は?
 館ものではありますが、中村青司の館シリーズとはちょっと趣が違い、 からくりなどは出てきません。文庫本で700ページ近くある、京極夏彦 ばりの(笑)綾辻氏渾身の一作。


■「グイン・サーガ93 熱砂の放浪者」(栗本薫・ハヤカワ文庫)

 ミステリではありませんが、番外編としてちょっとだけ感想を。
 92巻で忽然と主人公が消えてしまい、またグイン抜きで物語が進んだ らどうしよう(以前こういうことがあった(^^;)と思っていたのですが、 全編グインの話だったので一安心(笑)。そろそろシリーズ最大の謎に迫 るところなので、これから続きが楽しみです♪
 あとがきで栗本氏が「二百巻目指して」(312ページ)と書いておら れるので、まだまだ楽しみが継続すると思うとわくわくしますね〜。


◇◇◇


<2004/02/07>
■「十角館の殺人」  「水車館の殺人」  「迷路館の殺人」  「人形館の殺人」  「時計館の殺人」  「黒猫館の殺人」 (綾辻行人・講談社文庫)

 いわゆる「館シリーズ」として人気の作品たちです。孤高の建築家「中 村青司」が建てた風変わりな館を舞台として、次々と起こる殺人、奇抜な トリック、隠し部屋に隠し通路、思いもよらない動機など、ミステリの楽 しみを「これでもか!!」というぐらい凝縮して詰め込んであります。  探偵役として島田潔というなかなか魅力的なキャラクターが登場するの ですが、彼が主役というよりも、やはり「館」が物語の中心になっている んですよね。特に「時計館…」での仕掛けはすごかったです。最後の最後 まで目が離せませんでした。
 あと、文庫の表紙になっているイラストがどれも素敵で、すっかり気に 入ってしまいました。
 次作は現在連載中の「暗黒館の殺人」だそうで、まとめて読めるのを今 から楽しみにしています(^o^)。

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