読了報告 2004年4月

ミステリー'z MLに投稿したMIKAのメールから、読了報告のみ抜粋して掲載しています。

<2004/04/17>
■「長い長い殺人」(宮部みゆき・光文社文庫)

 この作品の目次を読んでまずのけぞったのが、なんと語りの主体が登場 人物の「財布」だということ。同じような手法を使って、「パーフェクト ・ブルー」(創元推理文庫)で犬のマサに語らせておりましたが、こちら は動物なので、擬人化されてもあまり不自然な感じはしません。が、無機 物となると話は別で、いったいどういう物語なんだ??とそれだけで大い なる興味を抱いてしまいました。
 …とまあ、読む前からすっかり作者の術中にはまってしまった私ですが、 期待にたがわず非常におもしろい作品で、しかも「財布」が語っていると いうことをついつい忘れてしまうほど自然にその状態を受け入れておりま した。
 内容としては保険金殺人を題材にしたミステリなのですが、それぞれの 登場人物の財布が語る話から、少しずつ事件の全容が見えてくるのがまた 快感なのです。いやもう、この「職人技」には脱帽です。


■「クロスファイア 上・下」(宮部みゆき・光文社カッパノベルス)

 「鳩笛草」(光文社文庫)に収録されている「燔祭」の続編。念力放火 能力(パイロキネキス)を持つ青木淳子が、その絶大な力を正義のため (と彼女は信じている)に使い続けるが、やがてそれはとある組織の目に とまる。そして、彼女は…。

 「龍は眠る」(新潮文庫)でも用いられた、エスパーを題材にした物語 です。
 超能力と言っても、それを持つ主人公たちは決して特別な人間ではなく、 たまたまそういう才能にめぐまれていただけのごく普通の等身大の人物、 として描かれています。
 そして、そういう能力を持っていることによって引き起こされる周りと の軋轢や差別、自分自身への自責の念などが、細やかに表現されています。 決して、ヒーローが大活躍して胸のすく思いがするような話ではなく、読 後感はどちらかというと彼らの悩みや矛盾、その悲しみが心に残りました。
 それにしても、「クロスファイア」での火による浄化?表現はすさまじ く、目の前に鮮明な映像が浮かぶようでした。そういえば、これは映画化 されているんですね。今度ビデオをさがして見てみようかな。


■「R.P.G」(宮部みゆき・集英社文庫)

 ネット上でお父さんとして「疑似家族」を営んでいた男性が殺される。 彼は「なぜ」殺されたのか。その意外な真相とは?

 本文中にひんぱんにメールや掲示板のやりとりが挿入され、こうやって ネットコミュニケーションを楽しんでいる私にとって、非常に興味深い題 材の物語でした。そして題名のとおり、まさに「ロールプレイングゲーム」 の様相を呈する展開になっています。どこからどこまでが「現実」なのか。 はたまたすべて「ゲーム」なのか。ネット人格のあやうさを鋭く描き出し た作品だと思います。
 また、最後に犯人を追いつめて自供させる手法は、思わずうーむとうなっ てしまいました。しゅごい〜。
 そういえば、役割を演ずるという点では、「レベル7」(新潮文庫)で 記憶喪失の男女が登場し、その真相を暴くべく綿密にしくまれた追及劇も、 同じような展開を見せますね。こちらも最後のどんでん返しには手に汗握っ てしまいました。


■「ステップファザー・ステップ」(宮部みゆき・講談社文庫)

 以前おすすめされた「少年物」(笑)ですが、 「寂しい狩人」(新潮文庫)や「今夜は眠れない」(中公文庫)、「東京 下町殺人暮色」(光文社文庫)などいろいろと読んでみました。
 どれもおもしろかったですけど、特にこの「ステップ…」は、ユーモア にあふれた軽妙な文体で、一読して気に入りました♪ だいたい、両親に 同時に?捨てられたしっかり者の双子に、雷に打たれて気絶した泥棒が介 抱される(拉致される?)なんて設定からして、もう最高にツボですわ。  最初はイヤがっていた父親役がだんだんと自分にとってなくてはならな い役割になってしまう、憎めない泥棒さんのキャラクターがナイスです。 これは続編はないのかな?もっと読んでみたいなあ〜〜。


◇◇◇


<2004/04/03>
■「スナーク狩り」(宮部みゆき・光文社カッパノベルスハード)

 以前、こちらのMLでおすすめされたサスペンス小説。さきほど書いた ように、古本店で安く売られていたのをゲットしたまま積んであったのを 手に取ってみました。
 一言、「おもしろい!!」。
 たった一晩12時間たらずの出来事を、複数の登場人物の視点を細かく 切り替えながら描いているのですが、収束に向かって突き進んでいく緊迫 感がたまりません。
 その、ぐいぐいと引き込む力を持つ文章を楽しむと同時に、もともと事 件そのものにはほとんど関係せず、たまたま関係者の周りにいただけとい う登場人物が結局一番傷ついてしまうという結末に、なんともやりきれな いものを感じました。素晴らしい作品の1つだと思います。


■「歪んだ素描」「暗闇への祈り」「追憶の猫」ー探偵藤森涼子の事件簿ー (太田忠司・角川書店ハルキ文庫&実業之日本社JOYノベルス)

 単調なOL生活に飽き飽きしていた藤森涼子は、会社をやめてなんとなく ながめていた求人情報誌で「求む、バカな人」という広告を見る。その文 句に惹かれて飛び込んだ先は探偵事務所だった…。

 どこにでもいそうな等身大の女性、藤森涼子が探偵という仕事を通じて 出会うさまざまな事件を描いた作品。「暗闇の祈り」は長編、それ以外は 短編集。とはいうものの、全体としては1つの「藤森涼子の物語」になっ ており、彼女の悩みや苦悩を通じて大きな物語をも楽しむことができます。  結末はネットをやっている人なら誰でもニヤリとしてしまいそうなもの で、これからのネット社会の可能性を示唆しているのかも、と思ってしま いました。
 「暗闇…」と「追憶…」の間にもう1冊あるようなので、探して読んで みようと思います。


■「ミステリなふたり」(太田忠司・幻冬舎ノベルス)

 その冷徹な視線を向けられると大の男も震え上がるという敏腕刑事、京 堂景子。しかし彼女は、夫の前ではかわいい女に豹変する。そして夫の新 太郎は、景子の持ち込む事件の謎を鮮やかに解いてみせるのだった…。

 主人公たちのこのシチュエーションだけで笑ってしまうような、ミステ リ短編集。それぞれの事件には「エプロン」だの「カタログ」だの「じっ くりコトコト」だの「お部屋ピカピカ」だの、主婦向け雑誌に出てきそう な題名がつけられており、しかも内容がそのイメージからは想像もできな いような方向へ行くこともあって、なかなかおもしろく読むことができま した。
 一番印象的だったのは、やはり表題作の「ミステリなふたり」かな。景 子と一緒にペンションにいたのは誰なのか?前の作品をよく読んでいれば そんなに謎ではなかったのかもですが、ついつい読み飛ばしてしまう私に は驚きの結末になっておりました。
 太田氏の作品はどれもぴりっとしたスパイスが効いていてお気に入りで す♪

読了報告にもどる

MIKAの読書部屋にもどる


MENU       HOME


素材提供:Invisible Green