読了報告 2004年7月

ミステリー'z MLに投稿したMIKAのメールから、読了報告のみ抜粋して掲載しています。

<2004/7/22>
■「不思議の国のアリス」(ルイス・キャロル 福島正実訳 角川文庫)

 断片的にしか読んだことがなかったので、古書店で63円で売られていたのを手に 取ってみました。
 SFというかファンタジーというか、独特の雰囲気がある作品だったのですね。 しかも語呂合わせやシャレが満載で、原語で読むことができたらもっともっと楽しめただ ろうなあ、とちょっぴり残念でした。
 ただ古い訳なので、たぶん今では使えなくなっている言い回しとかがひんぱ んに出てくるのが興味深かったです。新しい訳と比較して読んだらおもしろい かもですね。今度やってみようかしら。
 それから、和田誠氏のイラストがむちゃくちゃかわいいです(^^)。これ だけでも得した気分♪


■「探偵映画」(我孫子武丸・講談社文庫)

 ミステリ映画の結末編が撮影されないうちに、姿をくらましてしまった映画 監督。謎解きの解答は彼の頭の中にしかない。残されたスタッフと役者たちは、 公開に間に合わせるべく知恵を絞って結末編の撮影にとりかかるのだが…。

 ユーモアたっぷりの作品で、とても楽しく読むことができました。語り手の サード助監督のとぼけた人柄もいいし、登場人物たちのこっけいなあわてぶり の描写もよかったです。
 行方不明だった監督があらわれて明らかにされた、意外な結末編にもびっく りさせられました。こういうミステリもおもしろいですね。


■「螺旋館の殺人」(折原一・講談社文庫)

 折原一初挑戦です。

 題名からしてあやしげな館物かと思いきや、作家がこの作品を生み出す経緯 を手記の形で描いている第一部、その作品にまつわる盗作事件の話が第二部、 という変わった作りになっています。
 しかも「真相」が二転三転四転(笑)するので、それだけでも笑えてしまい ます。ちゃんと「螺旋」階段が出てくるのも芸が細かいですし。
 できれば「螺旋館の殺人」そのものを全編通して読んでみたいものですが、 これは無理なんでしょうね(^^;。


■「ドールズ」
 「ドールズ 闇から覗く顔」
 「ドールズ 闇から招く声」(高橋克彦・角川文庫)

 7歳の少女「怜」の中に突如よみがえった、江戸時代の人形師「泉 目吉」。 彼はその卓越した人形師としての技術と知識、そして観察力によって、現代の 事件の真相を鮮やかに暴き出すのであった。

 1冊目の「ドールズ」は、少女の中に突然現れた別人格の詳細を、ホラータッ チで描いています。全く違う時代に「よみがえり」を果たしておびえる目吉が、 からだを借りている少女の周りの人たちの温かな態度に、徐々に心を開いてい くのが感動的でした。
 2冊目は短編集で、現代で起きるさまざまな事件を、目吉独特の観察眼や洞 察力によって解決していきます。ある意味、名探偵ものと言ってもよいかもし れません。事件のモチーフも、折り紙やだまし絵などなつかしい雰囲気のもの が多く、興味深い作品になっています。
 3冊目は長編で、残忍な連続殺人事件に関わった目吉が、その驚くべき真相 に迫ります。猟奇的な描写がちょっと怖いですが、あまりに意外な犯人とその 秘密に驚くこと請け合いです。これはおすすめ。

 目吉センセー(作品内でこう呼ばれている)のキャラクターは性格も言葉遣 いも魅力的で素敵なのですが、そのからだを貸している怜ちゃんがわがままで いまいちかわいくない(笑)女の子なのが、ちょっと残念といえば残念ですね。 これから成長していく段階で、目吉センセーとナイスコンビになったりしたら おもしろいのになあ、と思ったりしました。


■「私が彼を殺した」(東野圭吾・講談社ノベルス)

 読み終わって一言。
 「『あなた』って誰なのよぉぉぉぉ〜〜!」

 東野圭吾の本が100円でラッキー、ということであまり深く考えず予備知 識もなく読み始めたため、最後は目を白黒させてしまいました(^^;。犯人がわ からないミステリだなんて、ひどすぎる〜(笑)。
 私は謎解きを「したい」のではなく「楽しみたい」のであって、こういう趣 向は欲求不満に陥ってしまいます。聞くところによると文庫版には解説が袋と じされているそうなので、今度立ち読み(爆)してすっきりしてきます。
 それでも3人の視点から交互に見た殺人事件の経緯は、迫力満点で非常にお もしろかったです。犯人がわからなくても(しつこい(笑))、充分楽しめ る作品だと思います。


◇◇◇


<2004/7/19>
■「超・殺人事件 推理作家の苦悩」(東野圭吾・新潮文庫)

 東野圭吾初挑戦です。

 え〜と、これってギャグ作品なんですか?(笑)むちゃくちゃおもしろかっ たんですけど。
 税金対策に犯人当て、異様な長編小説等々を題材にして、どんどんあらぬ方 向に話が進んでいくのが最高に楽しかったです。ブラックユーモアもちりばめ られていて、思わずニヤリとする場面も。
 中でも印象的だったのは、「超予告小説殺人事件」かな。ミステリ作品とし ても秀逸だと思います。主人公の作家があまりにかわいそうでしたが(^^;。
 それから、「ショヒョックス」も一度使ってみたいなあ(笑)。


■「孤島パズル」(有栖川有栖・創元推理文庫)

 学生アリス&江神コンビシリーズ2作目。1作目の「月光ゲーム」は少々肌 に合わない部分があったので(濃密な青春物は苦手(^^;)、どうかな〜と思っ て読み始めたのですが、こちらはそういう点ではあっさりしていてオッケーで した。
 題名の通り孤島もので、アリスと江神、そしてアリスの同級生のマリアが、 時価数億円のダイヤの行方にからんだ島内に点々と立てられているモアイ像の 謎に挑戦します。
 モアイ像のパズルもさることながら、3年前の死亡事故とからんだ連続殺人 事件の意外な犯人にもびっくり。ジグソーパズルを使ったダイイングメッセー ジや読者への挑戦などもあり、凝った作りでおもしろかったです(^o^)。


■「不透明な殺人 ミステリー・アンソロジー」(祥伝社文庫)

 有栖川有栖、鯨統一郎、姉小路祐、吉田直樹、若竹七海、永井するみ、柄刀 一、近藤史恵、麻耶雄嵩、法月綸太郎の各氏の作品が収録されているアンソロ ジー。
 どれもなかなかおもしろくて、一気に読んでしまいました。特によかったの は法月綸太郎の「ダブル・プレイ」でしょうか。まさに題名のとおり、二重に しかけられたトリックにびっくりです。若竹七海の「OL倶楽部にようこそ」も 最後にニヤリとさせられました。佳作揃いでおすすめです。


■「ぼくのミステリな日常」(若竹七海・創元推理文庫)

 若竹氏のデビュー作。とある会社の社内報に1年にわたって連載された、匿 名作家の短編小説がメインになっています。それぞれ独立したミステリの連作 になっており、それだけでもじゅうぶん読み応えがあるのに、最後に匿名作家 の正体が明らかになるやとんでもない事実が出てくるのがすごい。その噴出す る悪意にぞっとします。涼しくなりたい方はぜひ(笑)。


■「虹の天象儀」(瀬名秀明・祥伝社文庫)

 プラネタリウム投影機によるタイムトラベルものです。ミステリというより SFですが、主人公が出会う少年が謎めいていて、ミステリとしても楽しめると 思います。
 星空、特に「ムーンボウ(月光による虹)」の描写は、一度は実際に見てみ たくなるようなすばらしさでした。また、カール・ツァイス社製の投影機につ いても詳細に描かれていて、機械物が好きな方にはたまらないかもです。


◇◇◇


<2004/7/14>
■「百器徒然袋 風」(京極夏彦・講談社ノベルス)

 お待ちかねの榎木津探偵大活躍の巻、読み終わりました。ノベルスで500 ページ強と分厚いですが、3つの中編で構成されていることと、京極氏のリズ ム感あふれる文章とで、さくさく読み進めることができました。
 内容については、榎木津探偵のあいかわらずのはちゃめちゃぶりと、事件を 鮮やかに解決するご都合主義(笑)とに、スカッとする思いでした。最高のエ ンターテイメント作品だと思います。
 一番笑えたのが、榎木津探偵が「まともに」しゃべるところ(五徳猫)。そ の場面を目の当たりにして、語り部にして巻き込まれキャラの本島が「信じら れない光景」と独白しているのですが、まさにその通りだと大いにうなずいて しまいました。
 しかし、まっとうな受け答えをするだけでウケをとれるキャラっ て、珍しいですよね〜〜。


■「殺戮にいたる病」(我孫子武丸・講談社ノベルス)

 猟奇殺人を題材にした、我孫子氏の代表作。いきなり犯人が逮捕される場面 から始まるので、そこからしてびっくりです。京極夏彦の「絡新婦の理」の冒 頭も同じように始まるのですが、こちらは犯人の名前を明らかにしていないの に対し、「殺戮…」の方はフルネームを明らかにしており、しかも作品自体が その犯人と元刑事、そして「母親」の3人の視点から交互に描かれているので す。なので、特に矛盾なくすらすらと読み進めていくことができるのですが、最 後の最後になって目を疑うような展開になり、もう一度冒頭を読み直すはめに 陥った私です(^^;。いやもう、この仕掛けには脱帽でした。


■「ディプロトドンティア・マクロプス」(我孫子武丸・講談社ノベルス)

 まずこの舌を噛みそうな題名ですが、英題がついていないので意味がわかり ません(笑)。内容からして何かの学名なのではないかと見当はつけたものの、 まずここからしてミステリーですね。

 儲からない探偵に続けざまに持ち込まれた、失踪人さがしと失踪カンガルー (爆)さがし。一見なんのつながりもなさそうな2つの出来事は、実は巨大な プロジェクトにからんでいたのであった。そして探偵は、否が応でも事件に巻 き込まれていく。

 前半は、探偵が失踪人をさがすというごくごく普通の話なのですけど、後半 は榎木津探偵も真っ青(笑)の荒唐無稽な展開になってます。具体的には読ん でみてのお楽しみですが、果たしてこれがミステリ作品といえるのかどうかは よくわかりません(^^;。どちらにしても、おもしろい作品であることには間違 いないでしょう。
 ちなみに表紙と本文イラストはいしかわじゅん氏。なかなかいい雰囲気です。


■「放浪探偵と7つの殺人」(歌野晶午・講談社ノベルス)

 放浪探偵?信濃譲二が主人公の短編集です。
 少々変わった作りになっている本で、それぞれの作品が「問題編」と「解答 編」に分かれており、解答編は袋とじになっています。私は古本で手に入れた のでもう袋とじ部分は切り開かれてましたけど、こういう趣向もおもしろいで すね。
 とはいえ勘の鈍い私には、謎が解けたのは7つのうちの1つ「幽霊病棟」だ けでした(^^;。しかも、論理的に答えを導き出したというよりはそういう存在 を知っていたというだけの話で、全然頭を使っていないのが丸わかりです(笑)。
 謎解きがお好きな方におすすめです。


■「被害者は誰?」(貫井徳郎・講談社ノベルス)

 スーパー安楽椅子探偵?吉祥院慶彦の名推理短編集。こういうかっこいい探 偵には巻き込まれキャラがつきものなのか(笑)、ちょっと間抜けな刑事・桂 島と彼とのやりとりで話が進んでいきます。
 4つの短編で構成されているのですが、おもしろかったのは表題作の「被害 者は誰?」でしょうか。最後に収録されている「名探偵は誰?」もなかなかア ホらしくて笑ってしまいました。ユーモアのあるお話は大好きです♪


◇◇◇


<2004/07/05>
■「確率2/2の死」(島田荘司・光文社文庫)

 有名プロ野球選手の息子が誘拐された。が、犯人は計画途中で突如身代金の 受け取りをあきらめ、子どもも無傷で解放する。そして、その誘拐犯はあっさ り身元がばれ、追いつめられたはずみで自宅のベランダから転落死してしまう。
 事件は解決したかに見えたが、その結末に納得できない吉敷刑事は、相棒の 小谷とともに事件の洗い直しをはかるのであった。

 冒頭で、吉敷刑事が犯人の狡猾な手口に乗せられて全力疾走させられる場面 がもう最高でした。かっこいい刑事がへろへろになるのがたまりませ〜ん(お バカ)。


■「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」(島田荘司・集英社文庫)

 夏目漱石とシャーロック・ホームズとが夢の共演を果たす1冊。

 夏目が書いた文章とワトスンが書いた文章とが交互に出てきて、それぞれ同 じ事件を書いているはずなのに、全く印象が違っているところが大変おもしろ いです。特に、夏目の目を通して見たホームズの奇態ぶりは特筆もの。思わず 大笑いしてしまいそうになりました。
 最後のオチもナイスです〜。ほんとにこうだったらおもしろいのになあ。


■「死体を買う男」(歌野晶午・光文社カッパノベルス)

 自分の才能に限界を感じ、自殺をしようと紀州白浜の三段壁という断崖絶 壁にやってくる「私」(江戸川乱歩)とその友人萩原朔太郎とが、「私」の自 殺を止めてくれた青年がはかった、萩原の詩になぞらえた首つり自殺の謎に挑 戦する。

 特に狙っていたわけではないのですが、「漱石…」に続けてまたまた有名人 の夢の共演作品です。
 とは言っても歌野氏のこと、一筋縄ではいかないのですねぇ。

 「歌野晶午」が書いた本の内容は、「細見辰時」という元作家が書いた「白 骨鬼」という作中小説の形を取っており、しかもその作中小説は実は「西崎和 哉」という新人作家が書いた作品で、そしてその文体はあたかも江戸川乱歩が 書いたように表現されている、という実に複雑な入れ子構造になっているので す。(わかりにくい書き方ですいません(^^;)
 まるでロシアの人形マトリョーシカのような作品です(笑)。
 小説の内容も、そっくりな双子の入れ替わり殺人事件という、これまた複雑 怪奇な筋立てなんです。頭がこんがらがること請け合いです〜。


◇◇◇


<2004/07/02>
■「動く家の殺人」(歌野晶午・講談社ノベルス)

 信濃譲二シリーズ3作目。なんと冒頭でいきなり彼が「殺されて」しまうと ころから始まる、びっくり箱みたいな作品。彼の友人市ノ瀬徹はその真相をさ ぐるべく、彼が最後に仕事をしていた劇団「マスターストローク」の代表であ る風間彰を訪ねるのだが…。

 とある弱小劇団が、彼らの命ともいえる舞台を作り上げる過程が詳細に描か れています。主人公「信濃譲二」は、その劇団に制作としてアルバイト志願を するのですが、晴れの舞台で連続殺人事件が起こり、その謎を持ち前の頭脳で 解き明かしていきます。
 というのが大筋なのですが、どうもいろいろな場面での違和感がぬぐえず、 読みながら頭をひねっていた私です(^^;。以前、太田忠司の「銀扇座事件」の 上巻を読んでいたときも同じような違和感を感じたものですが、この謎は最後 にちゃんと明かされ、やっとすっきりしました。こういう大がかりなトリック はおもしろいですね。


■「生存者、一名」(歌野晶午・祥伝社文庫)

 都内でテロ活動をした「真の道福音教会」のメンバー4人は、海外脱出を手 助けするという教会の甘い言葉を信じ、そのまま屍島(かばねじま)という孤 島に取り残された。手違いで都内に帰れなくなった幹部1人を含む5人はサバ イバル生活を開始するが、なぜかメンバーが1人ずつ殺されていく。果たして 殺人鬼は「誰」で、生き残ったのは「誰」なのか?

 文庫で150ページほどの中編小説で、ちょこっと読書を楽しむにはぴった りの本です(^^)。5人のサバイバル生活やお互い疑心暗鬼に陥っていく様 子などが詳細に描かれ、思わず手に汗握ってしまいます。  ラストでは確かに1人だけ助かるのですが、その1人は実に意外な人物。し かもその人物についても永久に謎の部分があったりして、この思わせぶりな終 わり方がたまりませんね(笑)。


■「ヴィラ・マグノリアの殺人」(若竹七海・光文社カッパノベルス)

 若竹七海初挑戦です。表紙のイラストがかわいかったので手に取ってみまし た。が、その登場人物の多さと癖の強さとで、彼ら全員をきちんと把握するま でずいぶん手間取ってしまいました(^^;。
 作者が表紙裏で書いているように、確かに「暴力行為の比較的少ない」ミス テリ小説ではありますが、舞台である高級?住宅地「ヴィラ・マグノリア」で 連続殺人事件が起こり、キャラクターたちの隠された素顔などが明らかになる たびに、なかなか強烈なインパクトを感じてしまいました。
 しかも、すべての謎が明らかになり犯人が逮捕されたあと、ラストに出てく るとある人物の独白には、背筋がぞくっとしましたね。二重三重に仕掛けられ た作者の意図に感服です。

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