読了報告 2004年10月

ミステリー'z MLに投稿したMIKAのメールから、読了報告のみ抜粋して掲載しています。

<2004/10/22>
■「生首に聞いてみろ」(法月綸太郎・角川書店)

 病気で急死した彫刻家川島伊作は、死の直前まで自分の娘をモデルにした作 品に打ち込んでいた。しかしその作品の首が、川島氏の死後何者かによって切 り取られ持ち去られてしまう。
 そして、川島氏の遺作展が開催される美術館に送りつけられてきたのは、モ デルになった娘の本物の生首だったー。

 題名がいきなり挑発的な、法月氏久々の長編作品。帯によると、構想15年 渾身の本格ミステリだそうです。「生首」という言葉に反応(笑)し てしまった私は、すっかり夢中になって謎解きの世界にどっぷりとハマってお りました。
 殺人事件の真相はもとより、それぞれの章の冒頭にある彫刻における「目」 の表現方法についての引用が興味深く、謎解きにも一役買っているのがナイス でした。
 ちなみに名探偵法月綸太郎は、あいかわらず苦悩している模様です。それで も以前にくらべて、ほんの少し開き直った感もあるかな〜(笑)。


■「【倒錯の帰結】首吊り島/監禁者」(折原一・講談社ノベルス)

 先日文庫化されたということで注目していた、折原氏の倒錯シリーズ完結編。 たまたまブックオフでノベルス版を発見したので、購入してみました。が、古 本にもかかわらず状態がとてもよく、しかも真ん中の袋とじ部分がなんと未開 封だったので、ちょっとびっくりしてしまいました。ここを読まずに売っちゃ うなんて、もったいないことをする人がいるんですね(^^;。

 まずこの本を見て驚かされるのは、首吊り島と監禁者とが別の作品として独 立しており、しかもそれを1冊の本にまとめるために、それぞれ逆から始まっ て製本されていることでしょうか。つまりどちらが表なのか裏なのか、どこが 天なのか地なのかさっぱりわからない状態になっているのです。こんな本は見 たことがなかったので、それだけでも「倒錯」してしまいそうでした(笑)。

 中心的な登場人物は、「倒錯のロンド」と「倒錯の死角 201号室の女」 に出てくる小説家?の山本安雄と、OL?の清水真弓で、それに首吊り島の網元 の娘新見月代などがからんできます。
 もちろん前作2作を読んでなくてもじゅうぶん楽しめるでしょうけど、読ん でおいた方が作者のしかけたくすぐりが理解できるので、よりおもしろいかと 思います。いやほんと、奥が深すぎでした。
 奥が深いといえば、表紙裏に奥様で作家の新津きよみ氏のコメントがあるの ですけど、これにもちゃんとふか〜い意味が隠されてました。むふふ(謎)。


■「耳澄ます部屋」(折原一・講談社文庫)

 表題作をふくむ、叙述トリックを中心とした短編集。今まで折原氏の作品は 長編しか読んだことがなかったのですが、短編もとてもいいですね!それぞれ の物語の内容が濃く、しかも謎解きも私好みで喜んでしまいました♪
 中にはホラーめいた作品もあり、バラエティに富んでいて楽しめました。折 原氏未読の方にもおすすめの1冊です。


■「暗黒童話」(乙一・集英社)

 乙一氏初挑戦。あちこちでいろいろ話を聞いていたので、読む のを楽しみにしていた1冊です。
 第一印象は、とにかく「怖い!」。冒頭の「アイのメモリー」という作中童 話もぞくぞくするし、主人公の高校生が目をくりぬかれて(ひえ〜)記憶喪失 になり、しかも人格まで豹変してしまうという設定も怖すぎです。
 その後主人公は目を移植されて視力を取り戻すものの、その「目」に残され た記憶から誘拐犯を追うはめになります。しかもその誘拐犯は、自分が殺そう と手にかけた生き物(動物も人間も)を殺すことができず、逆に生命力らしき ものを与えるという特異体質の持ち主で、そのため異様な形に「手術」されて 生きている登場人物まで出てきます。もう驚きの連続でした。
 また、ミステリの王道に従い、誘拐犯の正体は実に意外な人物。怖い作品で はありますが、その一方で謎解きのわくわく感もたっぷりと味わえました。


■「ネジ式ザゼツキー」(島田荘司・講談社ノベルス)

 題名も(読む前は)意味不明だし、いきなり作品が横書きの体裁をとってい るのも意表をつくし、記憶喪失の男が書いた作中小説の「タンジール蜜柑共和 国への帰還」もわけわかんないし、殺人事件の死体の首に「ネジ」がはまって いるのも不可解だし、よくぞここまで謎をちりばめてくださいました、と叩頭 礼(爆)をしたくなりそうな1冊でした。
 謎解きは我らが「キヨシ・ミタライ」が行うものの、基本的に自分の研究室 から1歩も動かず相手の話だけからヒントを得てしまうところが、「占星術殺 人事件」を思い出させました。とはいえ、ワトスン役が石岡ではないのがちょっ と残念?


■「美濃牛」(殊能将之・講談社ノベルス)

 殊能将之氏の名探偵石動ものの中で読み損ねていた1冊。この作品で彼が初 めて登場するのですが、ひょうひょうとしてつかみどころのない性格はこのと きから全然変わらないんですね〜。こういう人物は大好きです。
 この作品には不思議な泉があるという噂の鍾乳洞が出てくるのですけど、実 はテレビゲームなどでは「ダンジョン」が大好きで迷路ものには目がない私な ので、こういう設定には読む前からわくわくどきどきしてしまいます。はっき り言って殺人事件の謎解きはそっちのけで(笑)、鍾乳洞の内部を探索する描 写が一番印象に残りました。
 閉所恐怖気味なので、自分では絶対入りたくないのですが(わがまま)。


◇◇◇


<2004/10/2>
■「3000年の密室」(柄刀一・光文社文庫)

 3000年前に殺害され、石造りの密室に放置されていたらしい縄文人のミ イラが発見された。「サイモン」と名付けられた彼はさまざまな角度から研究 され、新たな仮説などが相次いだ。
 そんな中、サイモンの第一発見者が行方不明になる。果たしてこの事件の真 相は?そして、3000年前の密室の謎は解けるのか?

 なぜか読み始めると眠気が襲ってきてな かなか進まなかった1冊です(^^;。でも、行方不明者が事故死するあたりから やっとエンジンがかかってきて、そのあとは一気に読むことができました。
 圧巻なのは、3000年前の密室の謎が解けるところでしょうか。やっぱ自 然ってすごいな〜と素直に感動できた瞬間でした。また、第一発見者の事故死 の真相が明らかになったとき、それと同時にしかけられた「未来へ向けての3 000年の密室」がまた示唆に富んでいい味を出してます。おすすめ。


■「暗黒館の殺人 上下」(綾辻行人・講談社ノベルス)

 編集者江南孝明は帰省中、建築家中村青司が関わったらしい「暗黒館」なる 屋敷の噂を耳にし、矢も楯もたまらずその場所へと向かう。霧深い峠を越え、 地震による事故に遭いながらもたどり着いた先は、湖に浮かぶ黒く壮大な屋敷 群であった…。

 綾辻氏の待ちに待った館シリーズ最新刊。奇矯な建築家中村青司が関わった 「暗黒館」をめぐる奇妙な事件を描いた上下巻1300ページの超大作、堪能 いたしました。
 実は読み始めた当初、周りの景色や江南の行動などが「異様に」細かく描写 されているので、なんでこんなに回りくどいことをするんだろ〜といぶかしん でいたのですが、最後まで読み通してみてこれにはきっちりと意味があったと わかり、その緻密さとトリックの壮大さに度肝を抜かれました。
 綾辻氏、すごいっす。もうどこまでもついて行きます(笑)。

 また、一連の館シリーズの雰囲気はもちろんのこと、囁きシリーズ独特のかっ こ書きの表現方法、眼球奇譚を思いおこさせるエピソードなどなど、彼の代表 作のモチーフがあちこちに見られるので、それを探しながら読み進めるのもマ ニアックな楽しみの1つかと思います。

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