連作:黄色い蕪の謎

(若竹七海:「プレゼント」冒頭)
 タクシーはラジオニュースを大音響でかけっぱなしだった。昨日から近くの
(MIKA)
道路工事で騒音に悩まされているというのに、こいつしばいたろかと運転手の
(あんどぅさん)
方を見た。が、私が乗っているタクシーには運転手がおらず、しかも車はなぜ
(お初さん)
かてっぺんにレモン色の蕪が載っている。え?あ、間違えてホクシーに乗った
(電さん)
――ワケないだろっ!んん?蕪に文字が?『セルフタクシー』って、私が運転
(紫微さん)
資金調達のためにレモン色の蕪を探していることは極秘のはずなのに…よりに

(MIKA)
よってタクシーの行灯に使われているとは。いやそれより、乗車したときは確 かにいたはずの運転手は煙のように消失してしまったのだろうか。だとすると このタクシーは「セルフタクシー」と銘打ってある通り、自動運転モードにで もなっているのか。
 と、疑問符で頭の中がいっぱいになったところでもう一度運転席に目をやる と、タクシー会社の制服を着た50がらみの男性が今度はちゃんと座っている ではないか。呆然としている私の顔にバックミラー越しにちらりと目線をくれ た彼は、ニヤリと笑って話しかけてきた。

「お客さん、驚かせたようで申し訳なかったですね。」
まだ事態を把握しきれずに言葉が出てこない私を尻目に、彼はおもしろそうに このタクシーの特殊装備について話し始めた。
「実はこのタクシーにはね、最新型の防犯装置がついているんですよ。何を隠 そう、行灯になっているレモン色の蕪がその秘密兵器なの。」
 私は、自分がさがしている「レモン色の蕪」について運転手がさも当たり前 のように話すのを聞き、驚いて目を見開いた。
「お客さん、さっき私をすごい目つきでにらんだでしょ?体中から殺気が出て ましたよ。でね、秘密兵器であるところのそのレモン色の蕪が人間のそういう 負の感情を数値化して計測し、運転手に危害が及びそうな場合、『透明化スク リーン』が自動的に降りてくるようになっているの。で、突然運転手がいなく なった車に取り残されてびっくりしている間に、そういう殺気や怒りなんかの 感情を忘れてもらおうというわけ。ね、人間の心理を鋭くついているでしょう。」

 私は彼のうんちくを聞きながら、自分がさがしていたレモン色の蕪の秘密を 偶然知ることができた運の良さにほくそ笑んだ。そして、どうやってこの蕪を 奪おうかと思いめぐらし、しゃべり続けている運転手にもう一度目を向けた。
 すると、私のよこしまな考えが蕪に読み取られたらしく、運転手の姿がまた 消えている。声が聞こえるところからすると、どうやら消えたように見えるだ けで運転手はそこに存在しているらしい。が、この際そんなことはどうでもい い。要は蕪さえ手に入れば万事うまくいくのだ。
 私は開いていた車の窓から、タクシーの屋根に乗っているレモン色の蕪へ手 を伸ばした。だが、距離があるためか蕪に手が届かない。運転手は私の行動に 気づかないまましゃべり続けている。どうする?いっそのこと、人気のない空 き地にでもタクシーを誘導して、そこで運転手を脅して蕪をはずさせるか?

 そんなことを考えていると、あいかわらず姿が消えたままの運転手が言った。 「お客さん、着きましたよ。」
 我に返って外を見ると、そこは警察署の前で、いつの間にかタクシーの周り をずらりと警官が取り囲んでいる。少し離れたところではマイクを持った報道 陣が待ちかまえているようだ。困惑した私は運転手を問いつめた。
「おい、着いたって…。警察に行けなんて一言も言ってないぞ。それにこの騒 ぎはいったいなんなんだよ?」
しかし姿の見えない運転手は私の詰問に動じることなく、のんびりとした口調 で答えた。
「お客さん、このタクシーに乗ったのが運の尽きでしたね。実は私は、密かに 犯罪者を捜査する団体『ホクシー』のメンバーなんです。で、このレモン色の 蕪には防犯装置だけじゃなくて、警察のデータベースと連動して指名手配犯の 情報を瞬時に読み取る機能もついているんです。
 お客さんは、レモン色の蕪でとある破壊活動の運転資金を調達しようとして ますね。ちゃんと調べはついているんです。おとなしく自首した方が身のためっ てもんですよ。」
 あまりのことに硬直してしまった私は逃げることもできず、そのまま警察署 内へ連行されるはめになった。

 警官にひきずられていく私の耳に、あいかわらず大音量で鳴っているタクシー のカーラジオから、レポーターの興奮した声が飛び込んできた。
「ニュース速報です。たった今、連続テロの実行犯が逮捕された模様です………」





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 紫微さんから一行回しがもどってきたとき、この話の主人公ではないですが、 想像を絶する?話の飛躍に思いきり硬直してしまいました。ああ、今回はしんどかった(^^;。
 というわけでひ〜ひ〜言いながら書きました。しかし、こんなタクシーがほ んとにあったら、人権侵害もはなはだしい話ですよね(笑)。

 ちなみにタイトルですが、某海外有名作品とは一切何の関係もございません (当たり前)。

 ミステリー’zMLで2005年4月から5月にかけてのゴールデンウィーク時期に行われた、「連作大会」に参加したときの私の作品です。



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素材提供:Invisible Green